得意不得意①

170413

前回、得意不得意ジャンルの話を書いたが、ちょっとそこを掘り下げてみたくなったので、今回から数回に分けて考察を重ねてみたい。
多少マニアっぽくなるけどごめんなさいね。

家庭での子育てや会社で部下を育てる場面なんかでしばしば迷いの元になるものに、「長所を伸ばすか短所を直すか」がある。
クイズに強くなる過程でもやはりこの2択の壁にぶち当たることがあるのだが、クイズの場合は人を育てるというものではなく、大抵は自分を育てることになるわけで、そういう場合、なぜか人はむしろうやむやにしてしまう。

あれ何でだろうね。本当は自分のことなんだから、よりちゃんとしないといけないんだけど、人間は人に対しての方がなぜか丁寧だったりする。家族がいるとちゃんとした料理を作るけど自分だけだと面倒になって適当な食事で済ます、みたいな感じなんだろうか。違うな。(どやねん)

ではクイズにおいてこの2択のどっちが正解なのだろう。もう答の想像はついていると思うけど、これ、「どっちもアリ」が正解である(笑)
すなわちクイズでは「得意なものを伸ばす」のも「不得意なものを直す」のもどちらでもよく、結局は「トータルで勝ちさえすればいい」ということなのだ。
つまりこの2択は、悩む価値すらない、ということなのである。

僕が考えるに、クイズというのは3次元のものだということだ。(これ重要ね)
そしてこれを追究し切るのは不可能に近いと思っている。

ちなみにこの場合の3つの次元とは、「ジャンル」「難度」「形式」で、たとえばある人が早押しなら文学の問題に無茶苦茶強くても、文学でも〇×問題ならなぜか正解できない、みたいなことがある。択一問題になった途端にカンが働かない、というものも同じだ。

多くの人はクイズにおいて「ジャンル」と「難度」を意識することはあっても、「形式」を制しようという意識には疎い。「クイズ=早押し」という面が必要以上に重要視されているのがその理由だろうが、それは現実的に早押し以外のクイズに接することがあまりないから仕方のないことではある。

そしてたとえ、あるジャンルにおいて難度と形式をクリアしたとしても、そのレベルのことを今度はすべてのジャンルにおいて達成しようとすると、それがほとんど不可能に近いことがわかるだろう。

だからまずクイズにおいては、浅く広くの「ゼネラリスト」タイプになるか、深く狭くの「スペシャリスト」タイプになるかの選択を意識しないといけない。
人間の持ち時間が誰でも「1日24時間」である以上、鍛えるものにも限界がある。だからまずはこの2つのタイプのどちらに進むかを決めなければいけないわけだ。

その基準となるのが、これはいつも言っていることだけど、「目標をどこ(誰)に置くか」である。
早押しだけの大会に出場してコンスタントに勝ちたい、と思っているならそこに特化して練習すればいいだけの話で、〇×や3択の研究をする時間があったら押しまくればいいのである。当然だ。
反対に、いろんな形式に強くなりたい、と思うのなら、たとえ苦手なものでも何回も経験すべきで、そうなると当然それぞれのジャンルが浅くなる。でもそれを良しとしつつ、先に進まなければいけない。
実は結構これって葛藤で、このゼネラリストタイプはどこかでブレイクするまでは、「いつもあと一歩なんだけどなー」という悩みにさいなまれることになるのだ。

僕らの時代は『ウルトラクイズ』があった。これは究極のゼネラリスト向けの番組だった。
ジャンケンはクイズではないけれど、〇×あり3択ペーパーあり1問1答(バラマキなど)あり、と、そこで勝つためには早押しだけがいくら強くても意味がなかったのだ。

立命館のクイズ研である「RUQS」の例会でのクイズは、この「形式」を制する意識が否が応でも植えつけられるというシステムになっていた。RUQSは『ウルトラクイズ』で3連覇をするんだけど、それは偶然ではなく、例会の方向性があの番組を勝つためのそれと一致していたからだろうと僕は思っている。

話は戻って。クイズにおいて「長所を伸ばす」のはスペシャリストに向かう方向であって、「短所を直す」はゼネラリストに向かう方向。前者なら「大得意ジャンル」や「大得意形式」をまず1つ作り、そこを足掛かりにジャンルを広げていけばいい。
後者の場合は、どんな形式が来てもだいたい大丈夫という程度に自分を鍛え、時間をかけてジワジワと難度を掘り下げて行けばいいのだ。
イメージは、学校にあるような25mプールがすっぽり入るような穴を自分1人で掘る、という感じだろうか。前者だったら、まず自分の近くの場所を1mの深さで掘り、そこから前後左右にガリガリ進む、という感じ。後者なら、まずプールの形に浅く掘り、それを繰り返して深くしていく、というようなものだ。

ちょっとこの先、かなり長くなりそうな気配がするので(笑)今回の話はここまで。

まずは、「長所短所」、すなわちクイズにおける「得意不得意」は、伸ばすのか直すのかの2択ではなく、どっちを先にするか、という順序だけなのだ。だから必要以上にネガティブに捉えないということが大事だ。
今回はあまり意識が向けられない、「形式」からのアプローチだったけれど、もっとわかりやすい「ジャンル」における「得意不得意」の対処法を次回は書いてみたい。

ではまた来週の木曜日。