早押し問題を作る

180503

今回は珍しく「問題の作り方」なんぞを書いてみようと思う。

クイズ問題を作る、と一口に言っても、その問題が使われる状況や出題される場面などで問題そのものの質や形式は違ってくるから、制作上の技術や手間はさまざまなものとなってくる。
形式ごとにいちいち紹介していくわけにはいかないので、今回はその基本となる「早押し問題」の作り方に焦点を定めてみよう。

あと一点。僕はクイズ問題を作るプロなんだけど、それはゲームやテレビ番組に問題を納めていてその結果報酬を得ているからこそである。
しかし今回書く話はそんなプロの仕事のことではなくて、大学時代からやっている、クイズという遊びの場面での出題問題の話だ。
サークル活動のような遊びで使う早押しクイズ問題の制作、ということになる。
(ひょっとしたらプロとしての仕事の話の方を聞きたい人もいるかも知れないけど、まあそれはまた違う機会に(笑))

さて、最近ではSODALITEで接していただくことができるけど、僕が出す早押しクイズの問題は基本的に短文の問題である。
演出上長文の問題が必要な時は流石に作成することもあるけど、99%以上は短い問題文を扱っている。

なぜ短い問題文を僕は好むのか。それは野球の試合に置き換えたらわかりやすい。(やっぱり野球か(笑) 日本中に伝播してしまったクイズ用語で野球由来のものがあったら発信源はまず僕と思ってくれてもいい。あと演芸用語からの転用も)

野球では投手が投げる「ストライクの球」が全ての始まりとなる。
もし投手が投げる球がことごとく大きく外れるボールだったらどうなるだろうか。四球の連続でそりゃ得点も入るかも知れないが、しかしそこからは野球の何の魅力も生まれない。
派手なホームラン、鮮やかなヒット、華麗な守備、眼を見張るような走塁、考えられないようなエラーに豪快な空振り三振も、みんな打者がバットを振った結果に生み出されたものであり、そしてその直接的原因は投手のストライク球(正確には「バットが届く球」)にあるわけだ。打者がつい見逃してしまう糸を引くようなストレートも同じだろう。

早押しクイズ問題というのはこのストライク球と同じものなのである。
とにかく打者がバットを振りたくなる球、すなわちクイズでいえば解答者が答えたくなるようなもの、答えられるものであることを念頭に置いて問題は作られなければならない。
そして単位時間により多くのプレーを生み出させようと思ったら球数を多くするしかない。クイズでいえばその結果、必然的に問題文は短くなるというわけだ。

僕が短文問題にこだわるのはこれが根本的な原因だ。自分が作った問題自体にスポットライトを当てるのではなく、あくまでも解答者が生み出す「何か」に重きを置きたいと思っているのである。

ただし、である。
ここから先は「クイズで遊ぶ」を30年もやっている僕の個人的なこだわりなんだけど、長戸勇人的にはそれだけでは不十分であるとも考えている。
その短い問題の中で、いかに解答者にカタルシスを感じさせたり、ギャラリーを沸かしたり、そして自分自身が満足するか、というエッセンスを入れるのである。
同じネタの問題でも出題者によって味がある場合がある。それはこのエッセンスの違いなのだ。

1960年代の終わりから70年代にかけて活躍されたクイズ王で、かのホノルルクラブを創設された小山鎮男先生もその著書のなかで「クイズは知識の俳句である」と記されている。
早押しクイズ問題についてはもうこれ以上の定義はないだろう。40年以上も前にすでに答は出ていた、そんな感じである。

早押しクイズという遊びをスリリングに進めて行く、そのベースとなるのが短文の問題なのだ。

では短文問題を作る具体的なコツをここで紹介しよう。

たぶん、多くの人は自作のクイズ問題はパソコンで打ち込んでいると思う。
たしかに誤字脱字、表現の変更など、制作上の手間を考えたらこの方はいい。
問題管理の観点からいうと非の打ちどころがないほどに有効だ。

しかしながら、どんなものにも長所と短所がある。
この場合にも短所がいろいろあるのだが、今回のテーマに即したものでいえば、「つい問題文が長くなってしまう」がある。

たとえば1つのクイズネタを見つけたとしよう。
ビギナーの人には何でもないことでも、ちょっと経験を積んできた人はネタの中にクイズ的に引っ掛かるものがやたらと見えて来るのである。
そして悲しいかな、それを全て問題文の「振り」などで紹介したくなってしまい、その結果、全部を無理に押し込んでしまうのだ。
麻雀でいうところの「多牌」である。

いまこんなことを偉そうに書いているけど、僕もその泥沼にはまってしまった時期もあった。とにかく無駄に問題文が長いのである。だからこういうことをついやってしまう気持ちもわかるのだ。
まあ今だったら上手くそれを3問ぐらいに分けて、「これはSODALITEの今月」「これは来月のビギナー」「これは再来月のスタンダード」、みたいな感じで振り分けるんだけどね(笑)

で、つい冗長な問題文になってしまうことを根本から解決してくれる方法がある。
それが「カードに書く」ということである。
21世紀の現代において何と「手書き」の奨励だ(笑)

ノートではない、あくまでもカードである。
この場合の「カード」というのは文房具屋に売ってる「情報カード」と呼ばれるもの。サイズは「名刺サイズ」だ。
いくつかのメーカーが出しているが僕が長年使ってるものは「LIFE」の情報カードである。

RUQS時代は「コレクト」というメーカーのものを使っていた。立命館大学の生協で働いていた僕の高校の同級生に頼んでたくさん仕入れてもらって、RUQSのメンバーでそれをバンバン購入していたことが思い出される。

「LIFE」のものは「コレクト」のものよりも厚く扱いやすい。
行数は「コレクト」が7、「LIFE」が5なので情報量はコレクトの方が入るのだが、行数が少ない分「LIFE」は文字を大きく書けるので見やすい。

「LIFE」と同じような仕様のものに「コクヨ」の情報カードがある。
これも厚みがあって悪くない。しかしながら若干だけど「LIFE」より行間が狭い。だから同じ5行なら「LIFE」の方を僕は選ぶ。

ただし「コクヨ」は裏が方眼になっているのがユニーク。これはこれで案外役に立つ。とりわけ僕みたいにいろんな形式を作る人間には重宝する。
ちなみに僕は「LIFE」のものを「赤」、「コクヨ」のものを「青」と呼んでるんだけど、「赤」「青」どちらを選ぶかはこれはもう好みだと思う。

で、このカードの5行の中でクイズの問題のネタを過不足なく入れること、これこそが短文問題制作に上手くなるコツなのである。

パソコンに打ち込むとつい長くなってしまったり情報量が多くなりすぎたりするものでも、カードなら物理的に限界があるので嫌でも問題文が短くなってしまうのだ。
文字数が限られるので言い回しに工夫したり、仮名を漢字に直すクセもついて難読漢字の鍛錬にもなったりする。(ホント)

そして「手書き」も重要な要素だったりする。
僕はシャープペンシルで問題文を書くが、ミスったりすると消して書き直したりしなければいけない。それが実に面倒だ。だからそうならないように一撃必殺の問題文作りが上手くなるのである。

カードで作った問題は後でパソコンでデータ化する。二度手間のように見えるが使用と管理という違う目的の行為なので二度手間ではない。
僕も時間がないときはパソコンで問題を作るが、その場合でも後でやはりカード化はする。カードで管理をする、ということも有効だからだ。

SODALITEなんかで僕がカードを手にしていたら、あああれか、と思ってほしい。
現物が見たかったらいつでも見せてあげます。

ではまた、来週の木曜日。