長戸流クイズの勉強法 その2

170216

今回は前回の続き。

長戸流クイズの勉強法の第一は、まず何よりも「問題を解く」である。
しかもその問題は「質がいいもの」のみをやるべきで、意外と思われるかも知れないポイントとしては「時事問題」や「ウソ問題」もそのまま記憶せよ、というものだった。
ではその量は?ペースは? これが今回のテーマだ。

クイズの初心者はどれぐらいの量の問題をこなせばいいのか。
こういう類のものは意外と明確な数字が出されない。
スポーツでも同じで、素振りは毎日○本やろう、とか、坂道ダッシュは○本こなそう、とかは書かれていない。なるべくたくさん、とか、効率よく、といったニュアンスで書かれている場合が多い。
そりゃそうだ。子供たちの成長の度合いもあるし環境も人それぞれだからね。しかもその数をこなしたら確実に成績が上がるのか、その数でないといけないのか、という保証も基準もないからだ。

しかし僕はここで敢えてちゃんとした数字を出して紹介する(笑) 自分のHPのコラムだから言いたい放題だ(笑)

初心者の人がこなすべきクイズ問題の量はズバリ、「1日800問」だ。

100でも500でも1000でもない。800なのだ。これ、僕は昔からずっと言っている。
その人の年齢や環境、そんなの知ったこっちゃないのだ。「1日800問、最低3ヵ月」。これをやり切れるかどうかが最初の関門なのである。

一口に800問といってもこれが難しい。そもそもクイズ問題を最低でも800は持っていないといけないからだ。
そしてこういうとき、必ずこういう質問をしてくる人がいる。
「毎日やるその800問は同じものでも構わないのか?」というものだ。

そんなもん、ダメに決まってるじゃん(笑) これは基礎の基礎を作る訓練なんだから。知識の幅を大きく増やすのは最低条件なんだから。
こういった質問を思いつくのはその人が常に受け身だということがわかる。自分で何かを発想しようとしないのだ。
もし本気でこう考えた人は長戸流どころか、クイズで突き抜けた強さを欲すること自体をやめた方がいいと思う。残念ながらあなたのクイズ人生は超一流になるそれではない。

反対に、800問×3ヵ月、つまり7万2000問の問題をすべて違うものにするのか、といったらそうでもない。むしろ全問違う問題というのもダメなのだ。なぜならば「反復による記憶」が期待できないからだ。
「反復による記憶」が期待できるものとしての1万問以下のモデルケースを考えてみると、たとえば8000問などはどうだろうか。「800問」が10回でき、それを90日間だから9セットもできることになる。これは最低限のラインかも。

あ、もう1つ。
異なった問題集をやっていると、同じ問題に遭遇することがしばしばある。これを800にカウントするかどうかだけど、これは「カウントする」が正しい。
むしろ同じ問題に遭遇すればするほどいいのだ。その問題は「出されがち」なものであり、「トレンド」であり、そして「それがみんなにとって常識」の度合いが高いものであるからだ。

面白いもので、強い人が問題を多く持っているのは結果的にそうなったということでアリなんだけど、強くない人で問題だけはたくさん持っているという人がその後ブレイクしたという話を聞いたことがない。こういう人はひょっとしたら問題を集める、ということに満足感を見出しているのではないかと思われる。
問題を解くことに重点を置いている人は、やっていくうちに良問悪問の区別ができてきて、「見るのも恥ずかしい」という問題に接する時間が減って行く。

だから自分が触れる最初の問題集が何か、というものは「運」なのかも知れない。問題の質がいいかどうかは初心者ではわからないからね。実力の伸びの大きさにこの最初の選択が影響を与えるかも知れないけど、それはよくわからない。
ちなみに僕の最初の問題集は『アップダウンクイズ』だった。

さて、この800問。やってみるとこれがまたキツい。
何がキツいかというと「時間がかかる」のだ。
特に最初のころは正解率も低く1問に費やす時間が相当長くなるので必然的にトータルの時間はかなりかかってしまう。

このキツさが苦にならない条件こそが「熱」である。
これは「やったるぞー!」的な思いであり、「ハマる」だの「ブチ切れる」だの「鼻血が出る」だのといったもので表現される状態だ。
実際のところは先に「熱」があって初めて「1日800問」があることになる。よほどの人でない限りその逆はない。
だからさっき「キツい」と書いたが、これを「苦になる」と思ってしまった段階で予選落ちなのだ。「熱」がある人は「キツいけど楽しい」となるはずだから。

ということは、この「800問」という数は、「これだけたくさんやらないといけないよ」というニュアンスではなく、「ここまでぐらいでも十分なんだよ」という意味になっているのがわかるはずだ。
僕もそうだったけど、最初のころは放っておいたらいつまでも問題を解き続けたり、クイズ番組のビデオをずっと見ていたものだった。
これは当たり前のことで、どんなスポーツでもプロになる連中はずっとそんな調子でその競技に接している。その選手の子供のころの練習ノートなどを公開するテレビ番組や記事があるが、あれを見て「すごいなあ」と言ってるようじゃいけない。「そんなの普通だろ」とか、「サッカーでも同じなのか」みたいに思えるようになっていないといけないわけだ。

また、自分にどれほどの「熱」があるのか、それが自覚できるのが「3ヵ月」という時間である。
派手ではないが内に秘めたる思いを持って行動する人がいるけど、そういう人は案外黙っていてもこの3ヵ月をちゃんとクリアする。反対に、やったるでー!と意気込んでいた人がいつの間にか(いろんな言い訳を発明して)やめてしまうこともある。
つまりこの3ヵ月という時間はその人がどの道を歩むにふさわしいかという「ふるい」なのである。

ここで改めて確認するが、僕の考えでは、クイズに対峙するときはすべての人が「突き抜けた強さ」を目指すべきだ、というものではないからね。クイズはあくまでも楽しむというのが第一だから。
今回僕が言っている「1日800問3ヵ月」なんてのは普通はやらなくていいのだ。むしろこっちの世界に足を突っ込む方がアホだから(笑)
でもアホはアホでいいんだけどねー(笑)

では僕を含めたアホの世界(笑)の最初の訓練のその後の流れを書いて行こう。

この800問、最初は無茶苦茶時間がかかる、というのはさっき書いた。その原因は「知識が足りない」のと「解答能力が開発されていない」からだ。
そして意外と気づかれていないのが「ダメな問題をやっている」というものだ。

最初の「知識量」に関しては簡単にイメージできると思う。正解がわかる問題はさっさと次に行けるから時間がかからない、というものだ。
そして次の「能力開発」なんだけど、これが重要。
問題を早くこなそうとすると、読みながら問題の全体像を把握、予測しようとしたり、キーワードで正解を導き出そうとするようになるのだ。あれ?この手続きはどこかで聞いたことがあるぞ。そう、早押しをしているときの脳の動きと同じなのである。問題を速読して正確に答え続けるというのは、実は早押しの訓練にもなっているのだ。

そして最後、「ダメな問題をやっている」である。
正しい表現をすると「この訓練にそぐわない問題をやっている」ことである。
1日800問の問題を解こうとすると、問題文は短ければ短いほどいいというのがわかる。問題文の核となる部分だけの問題(わかるかな)が並んでいた方が時間的には有利に決まってる。
年齢的に僕より下の世代で一時期問題を長くすることを良しとする動きがあった。それはそれでやはり麻薬的な面白さがあるから別にいいんだけど、今回のような訓練にはそういった問題はそぐわない。1問にいろんなエピソードが加えられ、4行にも5行にもなっている問題文は捨てるべきである。そんなもの800もやってれば、それだけで1日が終わってしまう。

初心者が作る悪問はこの方向にある。余計な前振りや不必要な表現など、問題を変にデコってるので長いのだ。
前回、テレビ番組の問題がいいといったのはここに理由の1つがある。
クイズ番組はあくまでもクイズのゲームや展開を見せるためのものであり、いくら問題が面白くとも問題自体を主に見せるものではない。なぜならば番組には「尺」があるためゲームを見せ切るためには問題の長さをある程度のものにしないといけないからだ。だから余計なものがそぎ落とされて行く。
1日800問はあくまでも訓練なので、訓練を達成するためにはちゃんとやり切ることが必要。だから時間はなるべくかからない問題を選ぶ方がいいのだ。

実際に出題されるときはどんな問題文の長さなのかわからない。逆にシンプルすぎる問題は出されないかも知れない。でもそれでいいのだ。「核」をしっかり身につけていることが大事なのである。
野球でたとえるなら(やっぱり野球か(笑))、たとえば試合であなたはショートを守っているとする。いまショートゴロが飛んできた。キャッチしたあなたの次の行動は何だろうか。ファーストに投げる?必ず?そんなことはないよね。1死1塁だったらたぶんセカンドに投げるだろうし、満塁のときはホームに投げるかも知れない。無死2塁だったら投げずに飛び出したランナーを追いかけてのランダウンプレーになることもあるだろう。
つまりショートゴロを処理した後の行動は状況によって変わる、が正解だ。
でも、少年野球の子供たちがする最初の練習は、その前の段階のものになる。つまり「ゴロを処理する」ことにある。憧れのプロ選手の臨機応変で華麗なプレーを見て自分もああなりたいと思っていたとしても、やるべきことはまずちゃんと打球を捕れるようになることである。そしてこれはその憧れのプロ選手だって毎日やっていることだ。

試合でダブルプレーを完成させたら、そりゃ誰だって気持ちいい。クイズ大会で難問を誰よりも早く押して正解すれば気持ちいいに決まっている。しかしそこを意識的に経験するのはまだまだ先の話なのだ。今はノッカーが打ってくるゴロをひたすら捌く、そういう時期なのである。

以上が「問題の量とペース」の話。
この話、学生にはできそうだけど社会人にはキツいなーと思った人もいるかも知れない。
その通りである。
何かをマスターしようと思ったら相応の時間をかけることは最低限必要なのだ。
社会人デビューしようと思っている人は最初からハンデを背負っていると考えてほしい。クイズの基礎を作るには、やはり時間のある学生時代が一番いい(ただし受験生は除く!受験生はクイズやっちゃダメ!(笑))。
しかしハンデを背負っているだけに、覚悟を決めた社会人の伸びには凄まじいものがある。これも過去何人も見てきた。
時間がないところで時間を作る。だから結局は「熱」の有無によるところが大きいのだろう。「熱」がないのに「オレもクイズ王になりたいなー」なんて思うのは、芸人の飯尾和樹さんの「現実逃避シリーズ」に似ている。昼間っからゴロゴロしているヤツが「あー、俺もヤンキースから10億で契約しないかって持ちかけられねえかなー」って妄想するみたいなあれね。

「熱」を持ってこれを3ヵ月こなしたら、あなたは確実にテイクオフできる。
その先はセンスのある人なら自分で最も効率のいい勉強法を編み出すことができるし、800問から減らしても同じ効果が期待できることもある。だって「クイズ脳」になってるから。
あとは実戦をこなして今度はそこの経験を積んで行くことだ。実戦でしか経験できないこともあるからね。ただそれも基礎をちゃんとやっているかどうかで感じる世界が全然違うんだろうけど。(基礎のない人の世界は僕はよくわからないので(笑))

僕があまり好きではない言葉に「継続は力なり」がある。これは省略しすぎだからだ。
好きならば続けることは当たり前で、何を継続させるかが問題なのだ。それが力になるのも当たり前で、どんな力がほしいかが問題なのだ。

今、「絶対にやったるでー!」と思っているアホの予備軍の人は(悪い言い方やなー)、ぜひ挑戦してみてほしい。自分の時間を何かに賭けようと思って、それがたまたまクイズなんだったら、本当に賭けてみればいいのだ。

おー、やっぱりクイズ理論は長くなるなあ。いかん。次回からはもっとライトなネタにしよう。
でもこれはこれで面白いので、いつか「クイズ理論限定トークライブ」というものもやってみようかな(笑)
みんな必死にメモを取ったりして笑いも全然なかったりする異様なものになるかも知れないけど。

ではまた来週の木曜日。