イントロクイズの効用
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つい先日、東京渋谷でイントロクイズのイベントがあった。
『QUIZ JAPAN』主催のイベントで、クイズをライブで楽しんでもらおうというものだそうだ。
僕は行かなかったんだけど息子が参加して2問正解したらしい。聞いたらそれはそれで満足したとのこと。面白かったとも言っていた。他の参加者も楽しかったと言っていた。どうやらイントロクイズのライブは成功したみたい。よかったよかった。
ところで僕もこの夏にイベントを行う予定。そう、第2回となる「長戸勇人トークライブ&クイズライブ」だ!
日時は『第13回』ファンならピンと来る8月13日。場所は都内を予定しているけど残念ながら東京ドームは借り切らないつもり(笑)
詳しいことはまたこのScarlet Factoryの中でお知らせしますね。
さてイントロクイズ。
実は僕もイントロにはハマったことがある。といっても中学時代の話で、今から40年ほど前のこと。『クイズ・ドレミファドン!』は毎週欠かさず見ていたクチで、「超ウルトライントロ」問題に熱を上げていた。
この頃にマスターしたイントロだったら今でも普通に戦えるのが面白い。最近のことは全然記憶できないのに、なぜかこの頃のイントロは整然と記憶されている。老化してるやん。
もし早押しクイズに強くなろうと思ったら、イントロクイズの技術はある程度はマスターすべき、と僕は思っている。なぜならばこのクイズ形式における問題を解くメカニズムが早押しクイズにも十二分に応用できるからだ。
早押しクイズでは「人より早く正解する」ことが最終目的なんだけど、実はこれはそんなに単純な話ではない。
昔『クイズは創造力』でも書いた通り、「出題」から「正解」までの間にはさまざまな手続きがあって、それぞれを意識しないといけないからだ。
問題を「聞く(見る)」→「理解する」→「正解を頭に思い浮かべる」→「ボタンを押す」→「答える」と、大まかにでもこの5つの手順がある。しかしながら早押しクイズの面白さは、これをバカ正直に1ステップづつ丁寧にやっていると、決して勝てないというところにある。
クイズに限らずどんな作業や仕事でも「時間短縮」は工夫次第で何とかなるものであり、何とかしなければいけないものでもある。
早押しクイズの場合では、先の5つのステップそれぞれで工夫をしてみる必要があるわけだ。
わかりやすい箇所でいうと、「ボタンを押す」というところ。
単純に「ボタンを押す」といっても、何指で押すのか、そもそも右手なのか左手なのか、など追究するテーマはいろいろある。技術的な点でいえば「押し込み」もその1つだろう。
あ、ここで用語が出た(笑)「押し込み」。クイズ研の連中は知っているだろうけど、何だそりゃという人のためにちょっとだけ説明を。
多くの場合、早押しボタンは指で触れるだけでスイッチが入るというものではなく、物理的に「押す」という動作を伴う。そして最初の位置から「カチッ」と鳴ってスイッチが入るまでにはごく微小な時間がかかってしまう。自動車のブレーキシステムでいうところの「空走」というやつだ。ごく小さい時間であっても早押しクイズでは無茶苦茶大きな差となるためここも当然「時間短縮」の対象となる。
「空走」の部分を「遊び」と呼ぶのだが、この「遊び」を限りなくゼロにするためにボタンはギリギリの位置まで持っていかなければいけない。これを「押し込み」というのだ。
話は戻って、この「押し込み」などにより「ボタンを押す」の部分は時間短縮できるようになるんだけど、では他のステップはどうか。
ここに今回の「イントロクイズの効用」が使われるのだ。
イントロクイズでは初心者と手練れの者が戦うと、まず確実に初心者はボロ負けする。クイズにはいろんな形式があるけれど、初心者がボロ負けする確率が最も高いのはイントロクイズだと僕は思っている。
そしてイントロクイズは一般の早押しクイズと違って「押し負け」を感じることが非常に多い形式でもある。
ではなぜそうなるのか、それは先程のステップでいえば2番目と3番目にあたる、「理解する」と「正解を頭に思い浮かべる」という手順がベテランにはほぼ存在しないからだ。
つまり、イントロクイズにおいては「問題を聞く」と「ボタンを押す」の間には、何というか、「肌で感じる」みたいなものが存在するのだ。(他に言いようがない(笑))
これはさながら、熱いヤカンに触れたときに手を引っ込める「脊髄反射」に近いもので、どうも情報が脳に届く前に押しているとしか考えられないものなのである。少なくとも僕はそう感じて解答していた。
つまり初心者が正解するために「わかろうとしている時間」がベテランにはごっそり抜けていることになるのだ。そりゃ一生懸命押したところで勝てんて。
しかし、このイントロクイズも何度もやっているうちに上手くなるもので、初心者だった人も徐々にそういうベテランの味が出せるようになってくる。そして次の初心者にボロ勝ちしてしまうのである(笑)
ではこれをどう早押しクイズに応用するか、ということが次の話だ。
とはいえ、もうここまで書いたらわかると思うが、クイズで指がやたら早い人はこのイントロのベテランのように脊髄反射の部分を利用しているのである。
一般問題はイントロクイズと違ってあらゆるジャンルから出題されるわけなので、自分の肌が感じた問題、懐に入った問題だけはこの反射で対応する、というのが正確な表現となる。
この能力をどうやって磨くか。これには長戸流ではちゃんと考え方がある。
普通なら、「たくさんの問題に当たってればそのうち早くなる」みたいに書くところだけど、この能力に限っては違う方法がある。それは「わざと早く押してみる」ことだ。
前に書いた「バカ押し」とは同じようでちょっと違う。あれはメンタル面の不調から来る抑えられない発作のようなものなんだけど、こっちは意図して訓練のために行うものだということだ。だから大会や例会でやるというより、もっと練習っぽい場面でやることがいい。
どういう風にするかというと、まず最初は「自分は知っているはず」と思ったら押してみることだ。実はこれだけでも十分早くなる。
次は「この問題は聞いたことがある」で押してみる。さらに「この問題は先が読める」、そして「肌が感じたから押してみる」となる。最後のはいきなり別次元の話になってしまったようだけど(笑)
もちろん誤答は増える。なので増えてもいいような状況や仲間内でやってみることが大事だ。実はその状況を作ることが一番難しいのかも知れないけどね。
しかしながら、ここでもっと簡単にこの能力を訓練する方法を僕が編み出したので、公開してみよう。
初心者の方が参加する僕のイベントや企画なんかでは必ずやるクイズ形式がある。
それは「クイズ王の脳を経験しよう」というものだ。
どういう風にするかは至極簡単。
まずジャンルも出題パターンもバラバラな早押し問題20問を用意する。難度は簡単なものから難問まで、何を使っても構わない。
そして初心者の方だけでボタンを占拠してもらい、それらを出題する。1問正解1点、誤答をしてもノーペナで。
まあ20問やっても正解がボチボチという結果になる。誰もボタンを押さない問題は半分以上あると思われる。
で、ここからが面白いところ。同じメンバーで、今やった同じ問題を順番を変えて20問やるのだ。今度は1問正解2点、誤答はやはりノーペナで。
すると、2周目あたりから明らかに指が早くなる。当たり前だ、今やった問題なんだから。
そして20問終わったら、ここでもう1回、同じメンバーで同じ問題を20問やるのだ!
この回は1問正解10点、誤答は1問休みで。この3段階の合計得点で勝敗を決するのである。
この3周目の問題でのみんなのスピード、押し方、ポイント、答えっぷり、果ては目つきや表情にいたるまで、つい十数分前までの初心者のみなさんはどこへ行ったの、って感じになるから面白い。
この3周目のときに経験する、「出題」から「正解」までの手続きこそが僕らのレベルのそれと同じであるため、「クイズ王の脳を経験する」ということになるのだ。
これで触れる「感じ」をもったところで、先ほどの「わざと早く押す」という訓練を積んでいけば強い。知識が増えるに従って確実に正解は増えていく。
ところで出題者側から見た場合のこの形式、誰でも簡単にできそうなんだけど、実は難しい部分がある。
それはこの形式のキモが「どの20問なら一番盛り上がるか」を考えられるかどうかにかかっているからだ。
ジャンルを散らせるのは最低限として、出題パターンを散らせることができるかどうかは案外難しい。もっと深い部分を求めると、問題によってどこで押すかというポイントを散らせられればなおいい。
さらに、問題数と得点配分をどうするか、もある。
今回紹介した「20問」も「1点、2点、10点」も僕がたどり着いた最も適切なものと考えているが、これを読んだ人がオリジナルで考えるのでもいい。
ちなみに僕が出題すると100%盛り上がる。いわゆる鉄板形式の1つである。
でももしあなたが出題してイマイチ盛り上がらなかったとしよう。それはひとえにあなたの出題者としての実力不足を表すことになる。
しかし、盛り上がらなかったらそれはそれでラッキーでもあるのだ。
なぜなら、あなたはその部分でまだ伸びしろがあるということに他ならないからね。それが顕在化することで努力をするポイントがわかるというわけだ。
というわけで、8月のクイズライブでは初心者の方、ぜひ「クイズ王の脳を経験」してみませんか。どうぞボタンを押しに来てください。
って最後は宣伝か(笑)
ではまた来週の木曜日。