クイズ企画についてのあれこれ その2
180809
最近やたらにクイズイベントづいている。
大学時代に初めて「プロ」としてクイズのイベントに携わったときはゲスト6000人を相手にするというビッグプロジェクトだった。それはそれでいい経験になった。しかし僕がここ最近やっているイベントとは、主に参加者2桁という少人数のもので、まさに「密室芸」(笑)と呼べるシロモノである。
クイズ企画の基本は今まで大学のクイズ研(RUQS)やサークル(クイズ倶楽部など)でやっていたことで、イベントではそれをアレンジして一般の人に提供するというものとなっている。
僕自身はやっていることやノリがほぼ33年間変わっていないのだが(笑)、今年、今月、今週に新しく触れる人もいるわけで、その人たちには真新しいエンタテインメントの1つになっているようだ。密室芸の場合、ゲストの熱や楽しんでいる感じが直接肌に伝わるので面白い。
「楽しかったですー」って言われて、「ありがとう。また来てね」と返す会話は、まさに「美味しかったですー」「またどうぞ」という客と料理人の会話そのままだ。
僕がクイズイベントをするにあたっては昔作った形式などを軸にすることが多いのだけど、それでも半分以上は新しい形式を「おろす」ことを目指している。しかしそれは直接的には来てくれたゲストのためというわけではなく、あくまでも自分のためにやっている。
なぜならば、過去にやった形式は僕自身が100%のワクワクを感じないからだ。
いや、面白いものは面白いのよ。これをやったら絶対にウケるという鉄板形式もあるにはある。何回やっても自分自身でも笑けるクイズもある。しかしそれでは僕自身が最後の最後の部分でノリ切れないのだ。
成功するか失敗するか、僕自身どうなるかわからないからワクワクして面白いと感じる。そしてそれは確実にゲストのみなさんに伝わっている。
僕の企画を評価してくださる方は多いけど、それはたぶんホスト側の僕が心から楽しんでいるからなのだろうと思う。僕がワクワクや面白がっていることがゲストのみなさんに伝播しているのだ。だからクイズそのものの面白さというよりも、それプラス、なんか面白そうに前で喋り倒している人、とワンセットで評価をされているのではないだろうか(笑)
まあいずれにしても楽しんで帰っていただければそれでいいんだけどね。
ところで、そんな僕のクイズ形式にはある1つのルールがある。
SODALITEに来ている人でもジワジワそれがわかってきた人もいるようだ。
すなわち、僕の形式は「パクられることを前提で作っている」ということである。
「パクる」といったらちょっと語弊があるかな。「盗む」、いや違うな、「奪う」、でもないし、「剽窃する」、じゃ一緒か。まあ何でもいいや、とにかく、僕がやるクイズは、ゲストが自分のサークルや仲間内で「すぐに真似できる」ものにしているのだ。
僕のクイズでは特に難しい技術を使ってできるものはやらないようにしている。道具にしたってそう。
たとえばクロスワードパズルを使ったクイズがあるけど、それをするにはクロスワードパズルを作れないといけない。その大前提が難しいということになってしまう。
まあエキスパート(ガチ)の連中ならそれでもいいんだけど(笑)、ビギナーやスタンダードの人にはそれでは真似ができない。だから採用しない。
また、道具も同じで、早押し機とトランプやサイコロのような誰でも手に入るものを使ってやることにしている。そうしないと道具が揃わないとできないからね。
ではなぜそういうことをするのか。それは僕の形式で面白いと思ったものがあったら、その形式を使って仲間内でクイズをやってみて欲しいからである。
実際、最近では僕の形式をサークルでやってみる人が増えてきている。そういう報告を受けることが増えた。
そして、クイズをパクられて腹立ちませんか、という質問も同時に増えてきたのだが、当然その答えはNOとなる。
この背景には、揺るぎない自信がある。
僕の自信とは、僕がこれまで関わってきた「RUQS」「関西クイズ愛好会」「クイズ倶楽部」で経験してきたクイズこそが、世界で最も面白いクイズであると確信していることである。(事実かどうかは別として(笑))
だから僕のクイズをパクることで、多くの人がその一端を感じ取ってもらえれば、と思っているのだ。面白いクイズが広まることは悪いことではないからね。
いろんな人がいろんなクイズに触れて、自分に合うものを見つけて、そこにこだわっていけばいい話だ。僕のやるクイズが面白いと思ってくれる人はこの方向で行けばいいのである。
もし僕のクイズ形式を真似て仲間内でやったときそれがウケて、いつもとは違うクイズの面白さが伝わったなら、今度はその仲間内で自分たちで新しいことを考えてみてほしい。何事も手本や基準やきっかけがなければできないものだ。僕らにとって『ウルトラクイズ』の各チェックポイントで行なわれる奇想天外な形式が基準だったように、僕のクイズ形式が多くの人の基準になるならそれはそれで嬉しいし、そここそが僕が目指しているところなのである。
だからどんどん真似してもらっていいんだけど、ただ1つだけ大事なことがある。
それは、そのクイズ形式をやる前に「これは長戸さんがSODALITEでやったもの」という前置きをすることだ。
こういうのはとても大事で、それがちゃんと自分の考えたものなのか人の考えたものなのかをちゃんと表明、確認しなければならない。
これを続けていると、後々自分にとって確実に地力になる。クイズ形式をクリエイトしたときに、「これは僕が考えたものですが」と大きな声で言えるようになるのだ。
もちろんそれはある意味矢面に立つことになるわけだから、結果的にそのクイズが面白くなかったら仲間内からも批判もされるかも知れない。でもそれを怖がっていたら創作活動はできないのだ。
新しいクイズ形式を考えようとするあなたは、クイズの歴史の上ではとても大事な存在となる可能性がある。だから思う存分創造力を伸ばしていただきたい。
とにかく、人の形式をまるで自分が考え出したかのようなドヤ顔でパクるような奴には決してならないで欲しいのである。そういう奴は絶対に伸びないからね。
最後に、もし僕の企画や形式を真似したら、チャンスがあったらぜひ僕にも報告して欲しい。どんな手ごたえだったか、どういう効果があったか。僕もぜひ聞いてみたい。
さて、自分が感じたよりもあまり仲間内でウケなかった場合、実はそこにこそ「形式を作る」上で大事なことが隠されている。
僕はパクられることを前提に形式は作るが、しかしそれはあくまでも「枠」としてのものだ。前にもこのコラムで書いたが、「形式」にはぴったりとフィットする「問題」というものがある。そこに気づいていない場合が多かったりするのである。
もちろん僕が出すクイズでは問題にも仕掛けを施している。誰々に有利な問題、とかは含めないように務めているが、ここの展開でわざと難問を入れてスルーさせて、とかまでなんかはちゃんと考える。
今後、クイズ企画を大学やサークルで発表しようかなと考えている人は、そういうところまで気を遣ってみてはどうだろうか。
クイズ形式作りもやはり奥が相当深いし面白いぞ。
クイズ企画についてのあれこれ、のシリーズ。次回はクイズ企画を作るにあたっての参考書について書いてみようと思う。
なんと、クイズ形式を作るにあたっての参考書が実在するのだ!
ほんまかいな。ウソやったらごめん。
ではまた来週の木曜日。