長戸的クイズ用語の基礎知識①

170112

クイズ理論めいたものを書こうと思ったら、用語の説明が避けて通れないことに気が付いた。毎回毎回いちいち、この言葉はこういう意味で、って書くのも面倒だ。
思いついた順に言葉の解説と僕なりの解釈、そして使用法なんかを書いてみよう。

まず最初は「ポイント」だ。
早押しクイズの用語として有名すぎるものだけど、たぶん一般の人は誰もちゃんとした意味を知らない(笑) クイズの世界にはそういうものがよくある。まあクイズの世界だけの話じゃないんだけどね。

ところでこの「ポイント」という言葉は僕が考えたものではなく、僕が学生のころにはすでにあったもの。クイズの先輩方が書かれた本の中で紹介されていた言葉。
このコラムはクイズ初心者の方も読んでいると聞いているので、ここで改めてこの「ポイント」を簡単に紹介してみよう。

早押しクイズにおける「ポイント」というのは、「問題のここまで聞いたら答えがわかる場所」というもの。よく引き合いに出される「百人一首の決まり字」と概念を同じくする。
早押しクイズにおいては、このポイントを探すという考え方さえあえば、「クイズに興味のある人」が一気に「クイズの初心者」となる。(ほんまかいな) なぜそこでわかるんですか?とか、なぜそんなに早く押せるんですか?という疑問におぼろげにも答えられるようになるからだ。
だからこの「ポイントの位置を探しながら問題を聞く」ということと、「いかにその位置でボタンを『押す』(僕的には『押し切る』という表現の方が好き)ことができるか」がクイズ初心者の最初の訓練の1つになる。

とまあ、ここまでが初心者のみなさんへのアドバイス。
いつもならこの後は、今や古典となった『クイズは創造力』でも書いたように、問題には型があって、それぞれでポイントが異なって・・・みたいなことを書いて行くんだけど、いい加減それも飽きたので(笑)、今回はちょっとステップアップしてみよう。
ここから先は初心者の時期を抜けた人へのアドバイスにもなるかな。

「ポイントは決まり字のようなもの」といえば確かにその要素もあるんだけど、早押しクイズはそんな単純なものではない。
百人一首の決まり字は「100の和歌」の中で完結しているからこそ成立するのであって(だからこそ究極に「深い」んだけどね)、スタイルと内容に制限のないクイズ問題においては、実際のところはポイントなんてのは問題文全体を見ることでしか確定されないものだ。

日本語は英語などのように疑問詞が最初に来ることがない以上、そもそもその問題が「何を答えるのか」でさえ、問題文のある程度後ろまで決まらないはずだ。漫才やコントでクイズ番組を題材にしたネタでよくある、「○○ですが~、」みたいな言葉ひとつでそれまでの内容が一気に覆される場合もあるわけだ。

90年代に、僕が敬愛する大西肇さん(『第16回』準優勝)が作った早押し問題に、
「アメリカの首都はワシントンですか?」
みたいなのがあった。
この問題、ノリとしては「アメリカの首都はワシントンですが、・・・」と読んで、「か」と「が」という近い音の文字で問題文を強制終了させるという離れ業となっている。
しかもこの問題における正解は「はい」だ(笑)
この問題、思い出すたびに吉本新喜劇の安尾信乃助さんの「おじゃましますか?」ぐらい腰が砕けてしまう。(ごめんなさい、関西以外の人!) でも出題されたときはその場にいた全員が狐につままれたようになって、全文を読んだにもかかわらず一瞬無音状態となったのだ。
誰もが答えられて、でも早押しで、最後に笑いが起きて、ってこういう問題は僕の理想とするところ。この大西さんの発想、勉強になるなー。憧れるなー。

話を戻すと、つまりポイントというのは、存在はしても解答者には決して把握されないものとしてあることになる。
しかしながら、ポイントを探そうとしないと絶対に早押しクイズに勝つことはできないし、問題文のポイントまでボタンを待ってしまうと他の解答者に先を越されてもしまう。
ということは、初心者の段階を抜けたプレーヤーは、これからはポイントを意識して「探す」ことから、ポイントからいかに「(前に)外す」ことができるかを心がけないといけないわけだ。

でもね、実際のところはやっていることは同じなんだけどね。
「ポイントを探す」ことが「問題の全体像を把握する」ことなわけだから、その全体像においていかに早く正解を出すことができるかを求めていることなんだから。
でも同じことでも、意識を変えることで全く結果が変わってくることがある。
ウチの息子は中学のとき野球のクラブチームに所属していたんだけど、コーチから「ストライクを振れ」って言われ続けて一時期スランプになりかけたことがあった。それを聞いて僕は「ボールを待てばいい」とアドバイスした。早打ちの気があり、バッティングに積極的な彼に対するアドバイスとしては、ボール球を見極めて好球必打で、というより、初球から勝負するつもりで行ってボール球だったら振らなかったらいい、という考え方に転化する方が適切だと考えたからだ。案の定、彼はその後打ちまくったんだけど、今回の話はそれに似ている。

ポイントは「そこで押す」というものだけど、決して「そこで押してはいけない」ものであることをわかっていないといけない。
じゃあどこで押すのか。ポイントの前で押すのが一般的なんだけど、上級者的には必ずしもそうとは限らない。前ではなく敢えて後ろで押す場合もあれば、問題文だけからは推測できない場所で押すことも必要なのだ。

僕はかつて関西ローカルの夕方の番組でクイズのエキシビジョン戦をやって勝ったことがある。相手は3人。いずれも『1億2千万人のクイズ王決定戦』の優勝者だ(そのうちの1人が永田喜彰さん)。しかも出題者はかの『アップダウンクイズ』の名出題者、佐々木美絵さんである。クイズ好きな関西のテレビは夕方のバラエティでこんな豪華なクイズネタをやっていたのだ。

僕はここで、自分がテレビのクイズ番組で正解した問題で、最も早かっただろうと思う押しを達成した。それが、「道が」だけで答えた「伊豆の踊子」である。
こうやって読むとある程度腕に自信のある人は「まあそう答えるよな」と思うかも知れないが、実際のところは何の前振りもなく時事でもご当地でもない問題で、しかもスタジオの生放送の番組で、ここで押せる人はそうそういないと思う。
でも僕は何もバカ押ししたわけでもなく、ちゃんとポイントを探して問題の全体像を把握し、そのタナとトーンで、ここ!と判断して押したのだ。

さあここで問題だ。「バカ押し」てなんやねん、「タナ」てなんやねん、「トーン」てなんやねん!(笑)
やっぱりクイズの話を書くと用語説明が必要になってくるよなー。
というわけで次の機会があればまた別の用語解説を。

ではまた来週の木曜日。