本当の優勝賞品

20170126

今回は『第13回』の裏話を1つ。

僕が『ウルトラクイズ』に優勝したときにもらった賞品といえば、ご存じ「冷凍保存権」だ。
このクイズの優勝賞品は罰ゲームも兼ねているんだけど(断言)、僕の場合は賞品地紹介のVの時にあの罰ゲームのテーマ音楽が流れたほどのガチさがあった。

ひと口に「罰ゲーム」と言っても人それぞれ。木村文彦なんて爽やかに『セントルイス・ブルース』を演奏して去っていたもんなあ。日用品で楽器を作って昔の黒人たちの思いを知るのが罰ゲームだとぉ?笑わせんなぁ。あんなの木村のイメージビデオじゃあねぇか! バテた恒川の涙、下手な演技の関根の情けなさ(笑) あれこそが罰ゲームだ!

何の話や。
あ、そうそう、で、その『第13回』の優勝賞品なんだけど、僕はあの「冷凍保存権」は本当に罰ゲームと思っていて(笑)、だけど別にちゃんとスタッフから貰っていると考えている優勝賞品があるのだ。
それが「ニューヨーク1日観光」である。

決勝戦のロケが行なわれるのは夜なんだけど、その収録が終わるとスタッフも挑戦者もすべて「おつかれー」となって気持ちが一旦リセットされる。ツアー中に嬉しかった出来事はたくさんあったけど、なかでもニューヨーク決戦の夜に、スタッフの藤原さんが部屋に来てくれて、「長戸くん、『バットマン』見に行こうよ」って映画に誘ってくれたのは嬉しかったなあ。当然日本語字幕もなく最初から最後までワケワカメだったんだけど。

そういやその映画に行く途中で例の「ボトルマン」に遭遇したのだった。
この話は昔、『創造力』に書いたんだっけか。当時海外で流行っていた犯罪に「ボトルマン」というのがあって、紙袋にあらかじめ割れたボトルを入れておいて、誰かにぶつかった際にそれを派手に落とし、「お前のせいで割れたじゃないか!」ってインネンをつけて金をせびるというもの。それを一緒に歩いていた永田さんがやられたのだ。

僕はその数か月前に南米でよく似た犯罪に遭っていて(偶然撃退したけど)、手順がわかっていたから藤原さんと永田さんと「逃げよう!」と走ったわけ。でもボトルマンは執拗に追いかけてくる。しかも後ろから「ヘイ!ミスター!」と叫んでる。なんでこいつは僕の大学時代のニックネームを知ってるんだ、とか思って僕は半笑いで逃げていたんだけど。

と、そのとき、街頭に人だかりがあった。テレビのロケをやっていたのだ。
その中心にいたのが当時最強と言われたプロボクサーのマイク・タイソン。これ幸いに我々は彼の後ろに回り込み(つまりカメラに映るように)、『ズームイン‼朝!』状態にしていたら、しばらく見ていたボトルマンもいつしか諦めてどこかへ行った。
僕は収録中のマイク・タイソンに向かって、「サンキュー、マイク!」と肩に手を掛けたつもりで心の中で叫んでおいた。(これじゃパンクブーブーじゃねえか)

さて、そんな夜も明けた翌日である。
この日は1日オフということで、僕には観光日が与えられた。これは優勝者にはよくある話。一方、永田さんは準優勝といえども先に帰るスタッフとともに朝の便でニューヨークを立つことになっていた。
しかしダメモトでプロデューサー(篠原さんだったかな)に掛け合ってみたところ、なんと、永田くんも遊んで行っていいよ、ということになった!
今回、みんな頑張ってくれたからね、ってプロデューサーは言ってくれた。いやー、ありがとうございます。
これはホントにラッキーなこと。他の回ではどうだったんだろ。僕の知っているところではまずありえないパターンなんだけど。

こうして僕らは2人で丸一日ニューヨーク観光をした。自由の女神には当然行ったしタイムズスクエアにも行ったさ。
何がいいって、1人でないのがよかったのよ。昨日まで一緒に戦っていた戦友と一緒、というのがたまらなく楽しかったのだ。しかも今日は絶対にクイズをしなくていい!(笑)
賞品地のサンフランシスコでもオフの日はあったけど、それでも市内観光をしているのは僕1人だし、部屋はキングサイズのベッドだったけど当然のように一人部屋で、ツアー中のように誰かと一緒といるわけではなかった。
ツアーはいろんな意味で追い込まれるだけに、その反動の雰囲気は、「祭りの後」などという言葉では収まらない寂寥感があったのだ。

全部解放されてのニューヨーク1日観光with永田さん。あれこそが本当の『第13回』の優勝賞品だと僕は今でも思っている。
だから翌日、「永田くんはここから帰国、長戸くんはサンフランシスコへ向かいます。」と言われたときに、すでに僕の頭の中では例の「ダダダーン、ダダダーン」という罰ゲームのテーマ音楽が流れていた。

ではまた来週の木曜日。