第7チェックポイント シドニー (1989年9月14日)

170914

シドニーといえばオペラハウス。
インスタ映えする建物だなー。

オーストラリア屈指の大都市、シドニーへとやって来た。
モーリー、ブルマンとクソ田舎とド田舎を回って来た後だけに高層ビル群や街の喧騒が妙に新鮮だ。

シドニーでは一体どんなクイズが行なわれるのか。みんな懲りずに無責任な「怪情報」の応酬を始める。
過去の傾向からみてそろそろゲストを呼んでのインスピレーション3択クイズだろうという意見が多かった。だがしかし僕は別の説を出した。というのも僕の頭の中にはあのモーリーの8人落ちという人数の不自然さが尚も引っ掛かっていたからである。
ブルマンでは形式上1人しか落とせないから、あのモーリーはここシドニーで13人にするための帳尻合わせのものではないか、つまり「13人」ということがミソのクイズをやるはずだ。(※1)
13人、13人…。あった!普通ラクビーは15人でやるものだが、ここオーストラリアには13人制というのがあるらしい。(他の人数のもある)
これや! 『第12回』のサンパウロで行なったサッカークイズのアレンジをやるに違いない!
と、この説を出した時、みんなは一斉に僕をバカにした。
(まあええわ。後で泣きを見るのはお前らやぞ。心の中でそう思ったが、実際にその後泣きを見たのは僕だったということには、この時は夢にも思っていなかった)
僕は自分の仮説である明日の「ラクビークイズ」に備えて腕立て伏せや腹筋などの軽い運動をしてから眠りについた。

クイズ会場はオペラハウスの前だった。
僕は初めてこの建物を見たのだが、うーん何というか凄い迫力だ。圧倒されてしまう感じさえある。
この日はやたらに風の強い日で、ただでさえ少し肌寒いほどだったのだが、ラクビークイズを想定して運動しやすいようにとトレーナーの下はタンクトップ1枚にしておいた僕にとっては思い切り寒い日となった。泣きを見てしまった。(※2)

13人用のテーブルが用意されていた。普通なら早押しボタンやウルトラハットが置かれているのに今日は何もない。
「ひょっとして…」
イヤな予感がした。
「それではみなさんに今日のゲストの方々をご紹介します!」
そう、ここではみんなの予想通りインスピレーションゲストクイズをやるのだ。

ゲストはオーストラリアに住んでいる一般市民の人たちだった。
ここでのクイズは彼らに日本のものを見せ、それに対する反応によってそのものが何が当てるといった形式で行なわれる。題して「日豪親善インスピレーションクイズ」である。

ここを勝ち抜けるのは13人中何と10人だ。
「3人も落ちんのかい!」
みんなざわついた。
さらに驚いたのは次のチェックポイントである。日程的にみても、もうそろそろアメリカ本土に上陸だろうと僕らは思っていたのだが、蓋を開けてみれば「ニュージーランド」であった。
ラッキー!一度行ってみたかったのだ、あの美しい国には。
美しいといったらもう一つ。今回のレイギャルである。
いつもならレイギャルはその土地土地の可愛い子なのだが、今回は一味違う。“princess of Sydney”だ。
大ラッキー!一度抱きしめてみたかったのだ、ああいう腰は。
ニュージーランド行きよりもこっちの方が嬉しかったのは言うまでもない。(※3)

後で聞いた話だが、もうここらあたりからはそれぞれのチェックポイントのレイギャルに、「一人変なのがいるけど、別に危害は加えないから大丈夫」という注意がされていたそうだ。(※4)
一体誰か知らんけど、気いつけなあかんで。(お前のことや ← 一人ツッコミボケ)

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

※1 つまり「13人」ということがミソのクイズをやるはずだ

たぶん、この「13人」というのは本来のチェックポイント(エアーズロックやパースなど)でのクイズでの通過人数の結果なのだろうと思う。13人でシドニー、は決まっていたもので、そこに至る道筋が変わっただけなのだろう。もちろん想像だけど。

※2 泣きを見てしまった

寒い寒いと言っている僕に関根が「自分の言っていた説って本当に信じてるんだ。」って半分呆れて言っていたのが無茶苦茶印象に残っている。

※3 ニュージーランド行きよりもこっちの方が嬉しかったのは言うまでもない

とは書いたけど(『創造力』ではカット)、シドニーとニューヨークのレイギャルはミス○○系なんだけどどちらも好みではなかった。がっかり。やっぱりゴールドコーストだよなー。
ちなみにレイギャルで美人だなーと思ったのはシドニーの次のクイーンズタウンとトマト戦争のツインレークスだった。

※4注意がされていたそうだ

実際にこの注意がされたのはアメリカ本土上陸後らしい。なぜそれを断言できるかは次のクイーンズタウンで書こうと思う。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

いよいよクイズ開始。
ウルトラの放送を見ていてもこのインスピレーションクイズが一番わからない。今回のように答を紙に書くのはまだいいが、3択の札上げになると全然ダメだ。
「そろそろヤバいのかな…」
少し不安になって来る。背筋に何やら寒気がして来た。そう、もちろんこれはラクビークイズ用の薄着のせいである。

1問目の「賽銭箱」は外したものの、2問目の「布団乾燥機」を奇跡的に正解する。というのも僕は実物の布団乾燥機を見たことがなかったからだ。
2ポイント取ったらニュージーランドだ。いきなりリーチである。

さて、問題の3問目だ。
カーテンの向こうに隠れている人物を当てろという問題だった。
日本の文化を代表する人物で現地の人がびっくりする人…。
「海老一染之助染太郎」が頭に浮かんだのだが、カーテンの向こうはそんなに広くないはずだ。あんなところで太神楽なんかできないし…。うーん、わからん!(※5)

しばらくしてトメさんが、
「さあ、私は誰でしょう」
と言った。でも全然わからない。私は誰と言われても…。
でもとにかく何かを書かなければいけないのだ。しゃーないな。僕は大きな字で答を書いた。
「ふくとめさん」
私は誰でしょう、と言われたらやっぱりこう答えるのが人情ってもんじゃござんせんか。
「何やってんだ、お前は。」
と笑われてしまった。(※6)
結局全員間違えたのでもう一度書き直し。
もうしょうがない。「間寛平」とか「島木譲二」とか散々迷ったが結局無難なところでさっきのお染ブラザーズを書いてしまった。

「正解はこの方です!」
そこには黒い服を着たヘンなオッサンが立っていた。
「Mr.マリック!」
うわーという声が挑戦者から上がった。だが僕は静かだった。なぜなら僕はマリックさんの顔を知らなかったのである。南米にいた僕はマリックさんが日本でブームになっていることすら知らなかったのだ。(実は彼が登場した時、「あ、高中正義だ」と思ったぐらいである)
この高中、いや、マリックさんの問題で正木と阿部姉が通過を決めた。さすがギャンブラーと女性のカンである。

続く第4問の「墨」を正解し、僕は難関と思われていたインスピレーションクイズを何と3抜けで勝った。
これは本当に嬉しかった。しかもまさかこんなところで“princess of Sydney”と「悦楽タイム」ができるとは。
放送でもわかる通り、彼女のプロポーションの良さは今回のレイギャルのなかでは群を抜いている。実際に触れたことがある人にはわかるのだが、あの腰のラインの感触はたまらないものがあった。

難問奇問を上手くすり抜け、みんな次々とニュージーランド行きを決める。
ついに残るは4人となってしまった。
RUQSの永田さんとジュニア山本、名大クイズ研の伊藤トシノリ、そして東大クイズ研OBの田川さんである。
ここから生き残れるのはたったの1人だ。

まず永田さんと田川さんが2ポイントを獲得し、この時点でジュニアとトシノリの負けが決定した。
そして永田さんと田川さんの死闘が始まった。
昭和38年1月10日生まれのター兄ぃと、昭和38年1月20日生まれの永田さんはインスピレーションもぴったりだった。間違う時はともに間違え、正解する時はともに正解するというものだった。
2人だけで何問やっただろうか。ついに最後はター兄ぃが粘り勝ち、またもやギリギリで通過を決めた。

永田さんが負けてしまった。
何でこんなところで…。二人でニューヨークに行こうと約束していたのに…。
しかしこれでクイズ的には少し楽になったかな、というスケベな気持ちも多少はあった。でも実際のところは悔しさや悲しみの方が大きかった。
「敗者復活戦、あって欲しいなぁ…」

さて、敗者3人を置き去りにして勝者10人はこの後、シドニー湾観光となった。
ウルトラのツアー中において、移動の途中という場合を除いては、まとまって観光を楽しませてくれるというのは基本的にはないものと思ってよい。観光というものは自分たちが自主的に行なうものなのである。ということはこのシドニー湾クルーズには何かの意図があるのだ。
ウルトラクイズにおいて「観光」はすなわち「拘束」なのである。今回のシドニー湾クルーズは、市内のモノレールで行なわれる敗者復活戦に近寄らせないためのものだった。

シドニー湾クルーズを楽しむ挑戦者たち。
永田さんが写っていないのはそういうわけか。
しかしオチャラケる田川さんなどを尻目に、
どこでも安定のイケメンぶりを発揮する木村は凄い。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

敗者復活戦

3人による敗者復活戦の形式は「サイキックイズ」。
15人のオーストラリアの人々が持つボードに書かれた言葉を、その番号とともに15個全てを憶えるのである。
リレー形式で番号がランダムに出題され、それを瞬時に答えるのだ。もし一度でも間違うと即失格となる。

3人の敗者はゲストのマリックさんから手助けとして「記憶術」を伝授してもらえた。
この記憶術は昔からある手法であるにも拘らず、現在でも利用の方法によってはあらゆる試験などに役に立つ、非常に有効性の高いものだ。(※7)

3人ともかなりまで頑張ったのだが、まずジュニアがアウト。そしてトシノリが失格となった。
復活者は永田さんとなった。さすがにしぶとい。
復活が決まった瞬間、彼はニューヨーク行きを確信したらしいが、それはともかく、このことによって本戦の勝敗の行方が再び不透明となってしまったのは間違いのないところとなった。

僕らは何も知らずに観光から戻って来た。そしてそのままバスで空港へ向かうことになった。
「敗者復活戦あったのかな?」
などといろいろ話しているときだった。
「おい!あれを見ろ!」
誰かが叫んだ。
見れば道路の向こう側からジュニアとトシノリが荷物を持って僕らのバスに向かってニコニコ手を振っているではないか。
「あれ?でも永田さんおらへんやん」
明らかに敗者復活戦はあった様子だった。ジュニアとトシノリ、そして永田さんと、2人と1人に分けられたのは間違いなかったのだが、どっちが勝ったのかは全くわからなかった。
あのニコニコ顔は一体何なんだ?復活したのはあいつらか?それともただの最後の挨拶なのか?

9月14日19時30分。
まだなお解けない大きな疑問とともに僕らはオーストラリアを後にした。
「一体誰が帰ってくんねん…」

 
クイズが終わってバスに乗り込んだ僕らに地元のJKたちが手を振ってくれた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

※5 うーん、わからん!

これ、サラっと書いているが、当時のRUQSの流行語だったりする。恒川の弟子で1回生ながらバーンとボタンを押して解答権を得るも腕組みをし、「うーん、わからん!」と豪語する猛者がいたのだ。彼のマネがRUQSでも流行り、そして当時の僕のマイブームでもあった。

※6 「何やってんだ、お前は。」と笑われてしまった

これ、どう考えても怒られる案件じゃん(笑) こわいなー。若気の至りだなー。トメさん、すんません。

※7 非常に有効性の高いものだ

後に『ワールド☆レコーズ』で記憶力ナンバーワンを決めるときに、僕はこの方法を使って勝ったのである。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

『第13回』の裏話はたくさんあるけど、そろそろ時効かなと思うのでシドニーでの裏話を公表してみようか。(ドキドキ)

本編にもある通り、インスピレーションクイズで勝った僕ら10人はシドニー湾観光に引っ張り出された。
自由行動ではなく強制観光ということは「拘束」や「隔離」を意味する。僕らは多分市内で敗者復活戦をやってるんやろうなあ、と言いながら観光を続けた。
当然結果はわからないのだが、観光を終えて市内に戻ってきた僕らの目に飛び込んできた光景が、上に書いてあるジュニアとトシノリの姿だったのだ。
このくだりは『クイズは創造力』では全てカットしてある。最後の最後で僕がカットしたからだ。だからこのネタを今初めて知ったという人も少なくないであろう。

さて、カットされた本編にもある通り、僕らは状況から敗者復活戦の結果が「2人」と「1人」に分かれたことまでは理解できた。しかしどっちが復活したのかは依然としてわからなかった。
そうこうしているうちに僕らは目的地に到着した。そこで合流するスタッフが来るまで待っていた。
事件が起こったのはここで、である。

日テレとは直接関係がない現地のスタッフ(日本人)が僕らに突然話しかけてきた。
「いやー、さっきの彼、すごく喜んでたねー」
んー?!
「なんかクイズをやったんですか?」
「やったよ。勝った彼は凄く喜んでたね。」
「喜んでいたのは1人ですか?」
「1人だよ。」

この人物がどんな立場でウルトラに関わっていたのかは今となっては知る由がない。ただ僕らの観光には同行せず、敗者復活戦が行なわれたあのモノレールのホームにいたことだけは確かだった。
この時点で僕らは全てを理解した。そうかー、永田さんが戻って来るのかー。

僕らはちょっと安心した。それは永田さんが勝ったからではない。無論ジュニアやトシノリが負けたことでもない。とにかく僕らは何でもいいから「正しい情報」が欲しくて欲しくて仕方がなかったのである。それほど精神的に追い詰められていたわけだ。
ウルトラクイズとはそういうものなのである。

ただし僕らもバカではない。事後処理をしなければいけない。とにかくそのスタッフに釘を刺さなければならないのだ。
「実はそのことは、僕らの耳に入れてはいけない情報なんです。だから僕らに言ってしまったということを他のスタッフには絶対に伝えないでください。僕らも聞いてないことにしますので。」
とにかく僕は、僕らが知ってしまったことがスタッフに伝わるのがマズいと思ったのである。

実はこのツアーではもう1つ、やはり情報が漏れて僕らが知ってしまったことがある。そのことと、今回なぜ僕が頑なまでにスタッフに情報を知られるのを恐れたかについては、次の次、ショットオーバーのコラムにて書くことにする。

ウルトラクイズではスタッフが僕らを全力で騙す。でも『第13回』に限っては僕らも騙し返していた。
お互いにどこまで騙し切れて、それがどこまでバレて、バレてるのがわかってるのに知らないフリをして、さらにどこまでわざとバラしていたのか、それは明確にはわからない。しかしわかってることが一つだけあった。お互いに最高のものを作りたい、という意識があったということだ。それだけは明確な真実だったのである。

というわけで、次のクイーンズタウン篇は16日の夜に。