エピローグ 成田空港 (1989年10月3日)

171003

成田空港へ到着した。

日本は10月3日になっていた。時計の針は午後6時前である。外はもう薄暗くなっていた。

「それじゃ長戸。放送を楽しみにしてろよ。」
トメさんが僕に握手を求めてくれた。
「はい。長い間、ありがとうございました。」

トメさん、そしてスタッフのみんなの後ろ姿を見送って僕はリムジンに乗った。

「成田を出た瞬間に自分が夢から醒めるのがはっきりとわかるんだよ。」
稲川のジジイの言葉が思い出される。
「…」

言葉では表現できない、この世でたった13人しか味わったことのない気分に浸りながら、僕は東京駅へと向かった。