4週目!!!! (1989年11月16日)

171116

高校野球の甲子園大会は準々決勝が一番面白いといわれる。
その大会で勝ち上がってきた実力校や勢いのある高校が勢ぞろいして1日の最高試合数である4試合分を満たしてくれるからだ。

僕はウルトラクイズもそうだと思っていて、ラス前の週が一番面白いと思っている。
挑戦者の人数が絞られ、実力や勢いのある人だけになって思い入れしやすくなり、またバラエティな形式ではあるものの、ちゃんとクイズも見せてくれるからだ。

『第13回』も例外ではない。僕はこの4週目が来るのを心待ちにしていた記憶がある。なにせこの週は「バンジー」であり、「恒川」であり、「トマト」なのだ。
僕はビデオで『第13回』を何回も見たが、多分視聴回数ではこの4週目が最多ではなかろうか、とさえ思うのである。

◆ ◆ ◆

●オープニング

ニューヨークへ行きたいかー!オー!の兄ちゃん登場!
これで4週連続オンエア。ドームの敗者なのにこれは快挙ではなかろうか。

「出た!バヌアツ!」
後にも書くが、1989年11月当時、まだ「バンジージャンプ」という言葉はほとんどすべての日本人は知らなかった。僕も記憶し切れてはおらず、勝手に「バヌアツのやつ」とか呼んでいた(笑)

「出た!トマトー!待ってたぞー!」
とにかくこのクイズが見たかった。『第13回』ではボルチモアがよく取りざたされるが、僕はこの大会の目玉はこの「トマト戦争」だと思っている。

さあルート紹介だ!
「おー、綴り、直ってるやん」
ようやく「ROUT」が「ROUTE」に直っていた。気づいたスタッフ、冷や汗モンだったろうなあ。

ニュージーランド、ショットーオーバーのジェットボートが映る。
実は僕らもあれに乗せてもらえた。このオープニングの映像では観光客が楽しんでいるバージョンが流れるが、本放送の際は提供スポンサーを紹介する画面のバックに僕らの映像が使われている。

●ショットオーバー

それぞれのセリフが決まる。
「そうそう、そんなやり取りがあったよなー」
実はこのやり取りのおかげでなくなってしまったのではないか、と僕が勝手に考えているものがある。
それは「ここまで残っているのはこの10名!」みたいな、短い挑戦者紹介Vである。
あれも楽しみにしてたんやけどなあ。
『第13回』はスタジオがなくなったり、コンピューターがなくなったりで、実は歴史的大転換の大会の1つだったのである。

レイギャル登場。
ショットーオーバーのレイギャルは、たしか全レイギャルの中で最年少だったと聞いた記憶がある。この子は18か19のはず。大人っぽいねー。

クイズ開始。ここでプチツボ。
オンエア3問目の木村の答、「バンジージャンプ」だが、これ実はアフレコである。よーく聞いたら声が後録音のものであるのがわかる。
ドームでの稲ちゃんの「10万26歳」のようなスタッフのモノマネではなく、声は木村のもので間違いないから、たぶん録音に出向いたのではないだろうか。
「えーっと」という芝居も入っている。これで彼はメンバー初の声優ということになる(笑)

さて、ではなぜこれがアフレコになったのか、を書いてみよう。

先述の通り、僕らはこの当時、「バンジージャンプ」という言葉を知らなかった。
クイーンズタウンに到着した僕らはいつものごとく現地のパンフレットを漁ってクイズ問題になりそうなネタを仕入れていた。そこにあったのがこのジャンプのもので、内容は理解できたが「bungy」の読み方がわからず、仮として「バンギ―」と呼んでいたのである。
あの問題で木村はほとんど「1人押し」(大声だから「1人叫び」)状態だったのは、僕らがその名称を記憶し切れてなく、賢い木村だけが憶えていてそれで「バンギー」と答えたのだろう。たしかそんな感じだったと思う。(無責任やなあ)

そうこうしているうちに秋利が2抜けを果たす。
秋利が抜けた時、上の勝者席でお約束の「長戸帰れー」を叫んだ。放送では2回も叫んでいるように聞こえている。でもこれは実は違うのだ。2回目の「長戸帰れー!」はたしかに秋利のものなのだが、1回目のあれは、永田さんの叫び声なのである(笑)

大声クイズを勝ち抜けると僕らは崖を走って上ってレイギャルの待つ勝者席へと向かう手はずになっていた。1抜けした永田さんは誰もいない勝者席へと向かったが、そこで下からトメさんが「永田君、何か一言」と水を向けると、永田さんはあろうことか「長戸帰れー!」と叫んだのである。これには笑った。

そうなるともし秋利が僕より先に勝ち抜けると同様のことを叫ぶのは火を見るよりも明らかだ。だからここは絶対に2抜けを果たして先に僕が叫ばないと悔しい思いをしてしまうことになるわけだ。
しかしながら残念なことに2抜けは秋利となり、むざむざ僕は奴の罵声を浴びることになった。

ちなみに3抜けは後輩の恒川だった。
こいつまさか「長戸帰れー!」って言うんじゃねえだろうな。
当時のRUQSは体育会系並みに上下関係が厳しかったので(なぜか初代会長の稲ちゃんを除く)、もしそんなことを言いやがったらタダじゃすまんぞ、と思っていたら、彼は全然違うことを叫んだのであった。
それが何かはちょっとここでは書けないので、またライブなり何なりのチャンスを見つけて僕から聞き出してちょうだい。

『第13回』ではこのチェックポイントだけだったのではないだろうか。勝者がクイズ中のメンバーに大声で具体的な言葉で声援を送れたのは。
ただし、トメさんが問題を読むタイミングで僕らは静かにしたので(そこはクイズ研究会)、声援はオールカットされてしまった。

そして勝者9人が決定。バンザイをする。
自分自身としては何気にあのバンザイのときの足の筋肉が好きである(笑)

いよいよ罰ゲーム。
トメさんのコメント「昨日も6人飛び降りてますよね」は、多分前日にここに遊びに来たスタッフの数である(笑) そんな話を後で聞いた覚えがある。

この罰ゲームの際のトメさんの追い込み方が面白い。ご本人も楽しんでやっているのが伝わってくる。とりわけ、「修羅場になるとチヨコちゃんという言葉がやっと出てきた」というコメントの時のトメさんのスーパービッグスマイルが眩しくて仕方がない(笑)

●ロサンゼルス

ウルトラクイズの舞台裏が流れる。
バスに積み込む機材のジュラルミンケース。それぞれに番号と名前が書いてあるのがわかる。ここにあったのだ「30・ユニフォーム」と「31・サバイバル」が(笑)

朝食時に僕が話している内容は、その前の夜に起こった「幽霊電話事件」のネタで間違いない。
これもここで書くのははばかられるので、いつかチャンスを見つけて話を聞き出してください。

バットマンハウスに到着。
クイズで使われるボードが立っている。誰が見ても「私がママよ」なのだが、ここで「双子だ!」と叫ぶ奴がいたことを記しておく。しかもそいつは3回も叫んでいる。同じラマダクラブのメンバーとして恥ずかしい限りである。

永田さんが最初に指名権獲得。
「では、サンバーン」で僕は大笑いしたんだけど、放送でのトメさんは華麗にスルー。

及川が1抜けをした後に僕が指名権を獲得。
僕は5番を選んだのだが、なぜその番号だったのか。
実は「5番!」(正しい発音では「ごぱん!」)は当時、RUQSで1年以上にわたって流行っていたセリフだったのである。語源は昔、亀井という奴が『アタック25』に出た際に…、って、そんな話をしても仕方がないのでここはカッツアイ。

クイズが終わった後、スタッフが優勝者予想をママたちにしてみたという話を後で聞いた。彼女らが予想した優勝者の最右翼は僕だったとのこと。さーすがー、見る目あるぅ!

そして後輩、恒川が落ちる。なぜか僕がインタビューを受ける。
恒川が落ちたのはたしかに残念ではあったけど、バスの中のあの表情はないよなー(笑)
それとあの音楽。あかんやろ、あれ(笑)

放送後、またあんなところで演技をして、とかよく言われたが、断言するけどあの一連の表情は演技ではない。むしろその逆で、この全ツアー中で唯一ともいえる、僕の「素」が撮られた映像なのである。疲れていてカメラがいることを忘れていたのだった。放送を見て「しまったー!」と思ったもんなあ。

しかし、あのバスの中でのセリフ回しやと永田さん、悪役やん(笑) そんでオレ、どんだけ後輩思いやねん。
あのシーンを見てファンになりました、という手紙が無茶苦茶多かったけど、ホンマ、ごめんなさい。多分、窓の外を見て考えていたのは「腹減ったなー」に決まってる(笑)

罰ゲームは恒川も正木も本気で大変そうである。やっぱり衆人環視のもとでの罰ゲームが一番しんどいのだ。
ちなみに僕が好きな罰ゲームのシーンは、バスに荷物を詰め込み終えて、トメさんから握手を求められた恒川がちゃんと手袋を外すところ。疲れていても礼儀を忘れない。いいよねー。

空港での敗者予想。
これは精神的にキツいよなー。
そういや日本に帰って来て真っ先にRUQSの例会に行った僕に、再会した恒川が最初にした質問が「次に落ちたのは誰でしたか?」だったな。
僕が「コアラやで」と言うと、「当たった。これで敗者復活できるかな」とボケをかましていたのが懐かしい。

●ツインレークス

何でもいいけど、「軍人」のみんなが着てる、あの「Black wolf tomato WAR XII 1989」のTシャツほしい。

トメさんのコメントでスタート。
ここのオープニングのトメさんのコメントは、翌年の『第14回』でも全く同じに使われている。

クイズが始まる。よく見ると最初はみんなゴーグルをつけていない。危なっかしくて仕方がない。
不格好なのはわかったが僕はとにかく目を守って走った。万が一目に当たって大事になってしまったら大会自体がお蔵入りしてしまう可能性もあるからだ。だから自分ができる最大限のケアをしていたのである。
目を守ったのではないウルトラクイズを守ったのだ!と偉そうに書いておく(笑)

トマトは実際に硬くて、当たったら無茶苦茶痛い。
どれほど硬いかが一番よくわかるのが、田川さんと関根の一騎打ちの最後の問題でのシーンである。
走って来る田川さんが掲げているシールドにトマトが当たって跳ねるのだが、凡そ柔らかいものが跳ねる角度ではないのである。あの動きは硬いものにしか起こらないのだ。
そういう硬さのトマトが胸に直撃したのが及川。彼はとても痛そうにしているが、演技ではなかったのである。(当たり前だ)

勝者席で僕がシャツの裾を出して手袋を外していたのは、レイギャルにハグするときに上半身を裸にしたから。僕のシャツはトマトと泥と草でひどく汚れていたために、彼女のドレスが汚れると思ったのである。
でもそれを見たスタッフが「長戸、相当欲求不満みたいだな」と言っていたのが、僕の耳に入っている(笑) ちがうっつーの。

「うー、今週はここまでかー」

◆ ◆ ◆

4週目あたりになってくると毎日誰かしらに声を掛けられるようになっていた。もちろん見ず知らずの人からである。

剣道をやっていたからなのか、フレンチレストランのギャルソンをやっていたからなのかわからないけど、僕は背筋を伸ばして前を向き、少し大股で歩く癖があった。しかしそれをすると声掛けの格好の標的になるのがわかったため、この頃から伏し目がちに歩くようになっていた。

アイドルになりたい、有名になりたい、人気者になりたいとか思う人が世の中には少なからず存在する。
でも僕は生まれてこのかた一度もそんなことを考えたことがないので、結果的に有名になってしまうウルトラクイズのシステムには少しだけ割り切れないものを感じていた。

「夢を叶えることができるけど有名になってしまう」のと、「夢は叶わないけど無名のままでいられる」の2択で迷った時期もあった。でも僕は敢えて前者を選択したのだった。だからそれを受け入れる覚悟はできていた。
その危惧がはっきりと形になって現れ始めたのがこのあたりの時期なのである。

しかし、見ず知らずの人から名指しで声を掛けられるのって恐怖以外の何物でもないんだけど、他の人はどうなんだろ。街を歩いている人がみんなテロリストに見えてしまうんだけどねえ(笑)

さてそんなこの4週目前後の出来事である。
僕は街でひっきりなしに声を掛けられるようになっていた。しかもこの頃は、後にも先にもこの時期にしか言われない言葉を掛けられていたのだった。それは質問形式の言葉なんだけど、その言葉とは何でしょう?
ってクイズの問題になってしまったが、さておわかりいただけるであろうか。シンキングタイムは5秒間である。

正解は、「で、誰が勝ったんですか?」である。

そう、この段階では僕はまだ「優勝者」ではないのだ。だから彼女らが質問してくるこの言葉の前には、必ずといって「応援してます!」が添えられていた。
いや、応援してますと言われても、という感じだが視聴者的には致し方のないわけで、当然僕は「ありがとう」と答えていた。

さて、この「誰が勝ったんですか?」の質問なのだが、これには続きがある。
この質問に僕は「そんなん聞いたら面白くないやん」と答えていたんだけど、中には「教えてくださいよー」みたいに食い下がってくる人もいるわけだ。
そういう人には必ず僕はこう答えていた。

「うーん、内緒だよ。勝ったのはね、東大の及川」

5週目の頭でどんでん返しを食らわせてやる、みたいなちょっとしたイタズラだ。
僕の設定では、コンボイで僕と及川が2人になったとき、その子が一緒に見ている家族に、「私、これ長戸さん負けると思う」とか預言者のフリをして直後にアホ呼ばわりされる、というのがあった。(ひどいな)
あと、最終週に向けて握ったときに「及川に全部」とか行って、スッテンテンになってしまう、みたいなのも面白いかなとも。ってそんなこと誰もしないか。

というわけで泣いても笑ってもあと1週で終わり。
来週の木曜日は祭日。出かけるときは留守録を。

ではまた来週の木曜日!